Rover Crew, 5th Setagaya

Rover Scout's Essays

Sep. 2017:バトン

何から書けばいいだろうか。2017年の上半期、キャンポリーがあまりにも私の中の多くを支配していた。この支配がいつ始まったのか、今となっては分からないが、解放されたらされたでどこか寂しさも感じる。この寂しさが消えない内に、今の感情を文字に残しておこうと思う。

私達の企画したキャンポリーが終わり、はっきりと実感したことがある。

「“私”は楽しむ側から楽しませる側になった」

世田谷第5団に入団して以来数え切れないほど多くの活動やプログラムを体験したが、それらは体験「させてもらっていた」 のであって、決してスカウトだけの力で自主的かつ能動的に行われた活動ではなかったのだ。恥ずかしながら私は、つい最近までこんな簡単な事にも気付いていなかった。今回の企画を受け持って初めて、このことに気付けたのである。

プログラム企画、タイムキープ、安全管理、組織への周知、物品準備や現地アポ、そして何よりもスカウトが楽しめるかどうか。これらすべてに別々の難しさがある。手間も時間も信じられないほどかかる。にも関わらず、実際にプログラムが行われるのは合計でも8時間程度。準備時間には到底及ばない短い時間で終わってしまうのだ。

この事実が何を示しているかというと、今まで私を含めたスカウトと関わってきた全てのリーダーの陰の努力の大きさである。私達スカウトが楽しんでいた時間の何倍も、リーダー達は準備に時間を割いていたのだ。これに気づいた時、今の自分の立場は周りのリーダーによって用意されたものだと理解した。そして同時に、自分が立つこの立場に責任を感じた。これからは“私”が下のスカウトを「楽しませる側」になる。いや、ならなければいけない。

さくら2017年4月号新しい世界に足を踏み入れることで書いたように、新しい「世界」へ踏み出すこと。そうすることが、今までのリーダーの方々へ少しでも恩返しをする最善の方法であり、“私”の責任なのだ。それはもしかしたら、「大人になる」とか「親になる」といった言葉で表明されるのと同じ種類の決意なのかもしれない。

準備から本番まで、キャンポリーを通して様々な人と関わったが、一番長く準備期間を過ごしたのはやはり同じローバーである3人の仲間である。おそらくこの文章を彼らも読むので恥ずかしい気持ちはあるが、この際書いてしまおう。

正直に言おう。企画の駆け出しの段階では、ローバーの3人に苦労させられた。

日程調整が出来ない。会議には来ない。LINEで疑問形で質問をしても誰からも返信が無い。OKかNGかもわからない。珍しく反応があっても、それに返信をするとまたしばらく反応が無い。全く話が進まなかった。この段階では、キャンポリーはボロボロの失敗に終わるだろうと本気で思っていたし、1人で全てを背負っている気がしてイライラしていた。

そんなイライラの中、はじめて自分を含めた4人全員が揃ったのは本番2ヶ月前の6月7日。そこから少しずつ状況は好転した。実際に顔をつきあわせると、LINEとは違って3人の意志が伝わってくる。話し合いが進み、具体的な仕事を割り振れた。リーダーのアドバイスのもと買出しや下見にも行けて、やっとなんとかできそうなレベルにまで企画が進んだ。

しかしディテールがまだ甘く、本番5日前の7月31日夜にまだやっていない事をリストアップした時点で、状況のマズさに気がつく。

なぜこのような事態に陥ったかといえば、直接会って会議を行うのが遅れたからである。私が見ていた「世界」とローバーの3人が見ていた「世界」に、大きなズレがあったのだ。当然である。人それぞれの「世界観」は違うのが普通だからだ。しかし、同じ目的に関わる仲間の間には、共有しておいた方が良い「世界」が確実にある。

ほとんどの実行委員会議に出席し具体的な話し合いを進める私と、会議に出ないまま私からの情報だけで仕事をする3人。これでは企画も進むはずがない。私の情報共有がもっとまめであれば、あるいはもっと早くに直接顔を会わせておけば、本番直前の混乱は簡単に回避できたかもしれない。私達が何よりもまず最初にやるべきは、キャンポリーに関わる「世界観」のすり合わせだったのだ。

本番4日前の8月1日、後発組に多くの残作業を託して、翌2日に出発。正直この段階では、まだ不安でいっぱいだった。企画の細かい部分を全て現地に入ってから作り上げた。その2日間は凄まじく忙しかったが、そのときになって初めて、他の3人と自分とが同じレベルでキャンポリーを作っていると感じることが出来た。「世界」を共有していると思えた。この団結した期間で準備は非常に効率よく進み、その甲斐あって、細かいミスはありつつも企画は成功を収めた。

私は勝手に、たったひとりで企画を作っていると思い込んでいた。しかしそれは間違いだった。私は背負い過ぎていたのである。「世界」を独占していたのである。私からの報告・連絡・相談が少ない中、ローバーの3人はそれに文句も言わずに、私が頼んだ仕事をかなりのクオリティで完成させてくれた。

はっきり言おう。このキャンポリーは、山根・松谷・清水のどの1人が欠けても成功しなかった。私は本当にこの3人に助けられたし、迷惑もかけた。感謝してもしきれない。ありがとう。

今回のキャンポリーは、当然のことながら、まずは楽しむスカウトの為に開催された。しかしそれと同じくらいに、企画するローバースカウトの為に開催されたと思っている。そのおかげで、“私達”はついに楽しませる側の「世界」へと歩みを進めたのである。

新たな「世界」への第一歩となったキャンポリー。出来栄えは自己採点では60点だが、みなさんは何点だっただろうか? それが高得点であることを切に願う。

追記:今回のキャンポリー企画と運営に関しまして、たいへん多くの方からご指導・ご協力を頂きました。本当にありがとうございました。未熟な私達4人ですが、これからも宜しくお願い致します。

ローバー隊 神田貴史