Rover Crew, 5th Setagaya

Rover Scout's Essays

Jan. 2018:ローバースカウト完全内定マニュアル

吾輩はボーイスカウトである。そして,もうすぐ就活生になる。

来年から就職活動(就活)が始まる。

ほとんどのスカウトには「就活」が何か分からないだろうから、説明しよう。就活とは、自分が希望する会社に入るため、筆記や面接などのテストを受けてその会社から「合格」を得るための一連の活動のこと。つまり、会社版入学試験のようなものだ。

特に面接は、他の受験生に差をつけるために自分をアピールするチャンスである。そしてその面接では、学校での勉強とは別に、どのような課外活動(勉強以外の活動)をしてきたかがポイントとなる。

今のベンチャー以下のスカウトにとって、就活はまだまだ先の事に思えるかもしれない。しかしこれから書くことは、軽く目を通すのではなくしっかりと読んでほしい。君たちにとって、とても重要なことだからだ。

ボーイスカウト活動は、就活で、武器になる。

私は今まで、ボーイスカウト以外の課外活動をあまりやってこなかった。やったとしても長続きはしなかった。課外活動をしていないことは、就活面接では大変に不利である。アピールポイントが無くなるからだ。

スポーツや音楽のような課外活動をやってこなかった私は、面接ではボーイスカウトの話をするしかない。それは就活において不利だと思っていた。ボーイスカウト活動が強いアピールポイントになるとは思えなかったからだ。

ところがどうして、私は気づいた。ボーイスカウト活動は武器になる。

なぜか?

それは、野球や音楽と違って、(少なくともローバースカウトの)経験者数が少なく、また(それが故に)、課外活動としてオリジナリティがあるからだ。このオリジナリティをうまく活かせれば、面接でのアピール力は絶大である。だから、ボーイスカウト活動は、就活で、武器になる。

しかし面接官は、ボーイスカウトと聞いてどういう団体かすぐ理解できるだろうか? 名前は聞いたことがあっても、ボーイスカウトという団体の中身まで知っている人は少ないだろう。「奉仕活動やキャンプをする団体」ではあまりパッとしない説明だし、「自ら率先して幸福な人生を切り開き、社会の発展の先頭に立とうとする少年」という紋切り型の言葉では、大切なことは何も伝わらない。

結局、自らの経験に基づく血の通った言葉でなければ、面接官には見透かされる。自分から浮いた言葉をいくら繋げても、ダラダラとしたつまらない話にしかならない。それでは、何もアピールにならない。

間違えてはいけない。面接官に分かってもらいたいのは、ボーイスカウトの本質ではない(少なくとも、それがメインではない)。分かってもらいたいのは、この私の「良さ」なのだ。だから、ボーイスカウトについて、いくら「正しい説明」をしても無意味だ。「説明」ではなく、「語り」をする必要がある。

では、具体的には何を話せばいいのか? もちろんそれは、それぞれのスカウト毎に異なる。この私の「良さ」を分かってもらうのだから、人によって異なっていなければむしろおかしい。

私の場合は、ボーイスカウトの早い段階で学ぶリーダーシップを軸にして、自らの経験を話す。ボーイスカウトでは、カブスカウトから班長や次長といった役職を担うが、そんなに早く積極性や責任感が求められる役割を与えられる活動は、他にあまり無いと思う。

話の軸は大事だ。それも、面接官が気に入りそうな軸を設定することが重要である。そのような戦略は、いかにも小賢しいもののように思われるけれども、話の構造を言葉を使って作るというのは、そういうある種の「インチキくささ」を伴うものなのだ。それはむしろ、言葉を使うことの強みとしてポジティブに捉えるべき「インチキさ」とも言える。

そのような話の軸に、この私の具体的な経験を肉付けしていく。私のリーダーシップという軸に対する具体例には、ジャンボリーやキャンポリー、自転車ハイクやスキューバダイビングなどの活動の中から、この私の「良さ」が最も上手く簡潔に面接官に伝わるものを選ぶ。そのときの面接の流れに応じて、柔軟にエピソードを選べるようになっているのが理想である。

話の軸がしっかりしていて、エピソードも適切に選択されている。これで面接での語りはバッチリだろうか?

そうではない。面接官は話の内容と同程度かそれ以上の関心を、話しているこの私の「雰囲気」に向けている。つまり「良さそうな」話し方や態度をしているかどうかを見ている。

面接官に好印象を持ってもらうためには、「語り」が自信に満ちていなければならない。実際には参加していない活動をでっち上げたり、参加していたとしても主体的・能動的・積極的でなかったならば、十分に「良い」雰囲気を醸し出すことはできない。先に述べた「血の通った言葉」を獲得するためには、堂々と胸を張れるだけの豊かな経験を、自ら実施・参加していかなければならないのだ。

ベンチャー以下のスカウトは、スカウト活動の中でスキューバダイビング等をやることは無いと思う。それもそのはず、ボーイ隊までは、ほとんどリーダー達が活動内容を決めているからだ。

しかしベンチャー以上になると、活動は基本的に自身で計画することになる。リーダーもついてこないことがほとんどだ。それは、本当に満足が得られる経験である上、就活面接ではとても強力な武器になるのだ。

現在のベンチャーは、「血の通った言葉」を獲得するに足る活動が少ないように思う。これは本当にもったいないことだ。部活などで忙しいのはわかるが、夏休みや春休みに数日空けるくらいのことは出来るだろう。

そして、誰かが活動を計画しない限りは何も始まらない。他人が言い出すのを待つのではなく、自ら積極的に提案して欲しい。その積極性こそが、就活ではあらゆる場面で活躍するのだ。

ここまで読んでくれれば、君も絶対内定!

…などと、まだ実際に就活を始めていない私が言ってもしょうがない。それこそ就活経験が無いのだから、ここまでの話は「血の通っていない言葉」だ。もうすぐ就活生に、そしてその先で(きっと)社会人になる私は、今現在は大学生に過ぎない。

ここまでの話をひっくり返すようだが、大学生というのは、「血の通っていない言葉」を使って、自分の経験に基づかない「浮いた語り」をしても許される存在だと思う。許されるから、言葉の「インチキさ」を上手に使いこなすためのトレーニングができる。それが大学生の特権なのだ。

主体的・能動的・積極的にスカウト活動に参加した経験と、言葉の「インチキさ」を使いこなす能力。この2つが合わさった時、就活面接はきっと成功する。それどころかその2つの融合は、就活面接に限らず、これからの人生の様々な場面に何かしらの形で影響を与えていくものなのだと思う。

最後に自分が言うのも何だが、学生生活はあっという間に過ぎる。私は大学生という最期の学生生活を送っているから、そのことを強く感じる。まだ時間があるからといって後伸ばしにすると、後々痛い目をみるだろう。

こうやって、仲間たちと活動できるのも学生の時だけ。社会人になったら今みたいな時間はずっと少なくなるだろう。だから、君たちには今のうちにボーイスカウトをエンジョイして欲しい。それは、就活面接に役立つのみならず、君たちの人生をきっと豊かにするはずだから。

ローバー隊 松谷康太郎