Rover Crew, 5th Setagaya

Rover Scout's Essays

Aug. 2018:情報との付き合い方

我々は高度情報化社会に生きている。世界はインターネット網に覆われ、どれだけ長生きしても消化しきれない程の膨大なデータが、24時間365日世界中を巡っている。情報が資源として価値を持ち、情報を制する者が世界を制する。そんな時代が到来した。

そんな現代において、ITスキルは必須である。ところが、教科としての「道徳」と同じく、「情報」の授業はいささか軽視されすぎている。

高度情報化社会を生き抜くうえで重要なものがある。先にも述べたITスキルや、たびたび取沙汰されるネットリテラシーも大切だが、もっと具体的なデバイス、情報という仮想的存在と物質世界に生きる我々の橋渡し役、スマホである。

まず前提知識として、情報端末についておさらいしておこう。情報端末とは情報の伝送路の末端にぶら下がるモノの事である。この端末は様々な形態をとり、その主流は過去何度か代替わりを果たしてきた。数年前まではノートパソコンであり、今はスマホである。

情報端末として従来のノートパソコンよりスマホが優れている点として、その携帯性がある。小型ゆえにどこにでも持ち運ぶ事ができるのだ。加えて、モバイルデータ通信網が整備されたため、常時インターネットに接続することが可能となった。この携帯性と常時のネット接続という2点が、情報との付き合い方を変え、我々の生活を良くも悪くも一変させたのだ。

さて、タイトルの通り情報との付き合い方について話そう。ここで言いたいのは、よくあるネットリテラシーという抽象的な話ではなく、スマホを使う上で意識するべき具体的なことである。情報との円滑な付き合いにおいてネットリテラシーは必須ではあるが、それ以前の話として、多くの人のスマホの使い方はいささかいい加減に過ぎるのだ。

情報は今日、物質資源と同等に重要な意味を持つ。そんな状況にあって、そこへのアクセス手段としての情報端末は唯一スマホのみ、という人は少なくない。したがって、スマホの使い方ひとつであっという間に情報漏洩のリスクに晒されてしまう、ということはもっと危機感を持って認識されるべきである。基本的に情報は公開するものではない。秘密にすべきものは秘密にしなければならない。ところがスマホは、正しい設定をしないと情報の保管場所として非常に脆弱だ。スマホを使うにあたり、次の3点に注意すべきである。

まずは画面ロックを必ずかけること。特に年長者が、ガラケーの名残でロックをかけずに使っているのを時たま見かけるが、鍵付き金庫は鍵をかけずに使うものではない。

またAndroidユーザーの多くはSDカードをスマホに挿していると思われるが、これはセキュリティの観点からみてあまり良いものではない。ご存知の通り、SDカードのデータはスマホのロックの有無とは無関係に簡単に中を見られるからである。他人に見られて困るようなデータはなるべくSDカードに保存しないといった対策が考えられるが、最近のスマホは十分な容量を持っている事が多いので、引継ぎ等の場面以外ではSDカードを使わないという選択肢も有効だ。

そして残るのがスマホそのものの暗号化である。実はある程度の専門的な知識を持ち合わせていれば、高価な専用機械が無くともパソコンを活用してスマホの内部データをロックを無視して抜き取る事が可能である。この時暗号化がされていないと、個人情報が流出してしまう。iPhoneでは自動で暗号化処理を行っているので心配はないが、Androidでは個別の設定が必要なものが多く、注意が必要である。

これら3点、特に最後の暗号化は、意識しない事が多いのではないだろうか。情報化社会はまだ日が浅く、こうしたことはまだ学校の授業では教えられないかもしれないが、情報と付き合う上で必須の知識としておさえておきたい。

さて、ここまではスマホのセキュリティに関する話である。しかしそこで注意すべき点として挙げた3つは、実は「そなえよつねに」を実践するときにも役に立つ。

どういうことか?

1つ目の「画面ロックを必ずかける」は、家に例えると戸締りに相当する。そしてさらに抽象化すれば、それは「問題発生前の最初の対策をうつ」ということである。

2つ目の「SDカードをなるべく使わない」は、大金を無闇に持ち歩かないことに相当する。それは「問題発生確率を下げるために弱点をさらけ出さない」ということである。

3つ目の「スマホそのものの暗号化」は、仮に財産を盗まれても使えないようにすることに相当する。例えば紙幣ではなくクレジットカードであれば、犯人が使うのは比較的難しくなる。それは「問題が発生したとしても大事に至らないようにする」ということである。

以上の3段階の考え方は、スマホやお金の問題に限らず「そなえよつねに」の実践において有用である。実際、登山などを計画するときの安全確保を考えると、この3段階のそなえをしていることに気づく。

第一に、登山をするスカウト達に対して安全意識を高めるよう指導する。

第二に、危険な道や橋などを避けたり、天候が悪化すれば登山を中止したりする。

第三に、万が一怪我人が出たときのために、緊急病院の事前把握や、そこまでの輸送手段の準備をしておく。

ここで確認したITセキュリティとボーイスカウトの安全確保の例に限らず、様々なモノ・コトについて、大事なポイントを抽象化するとそこに共通した思想が見出されることは良くある。

本エッセイの前半で情報と物質(あるいは仮想と現実)という対立項を出し、情報(仮想)が物質(現実)の世界に強い影響を与えるようになってきていることを述べた。実はこの情報と物質の関係については、近年物理学の分野で大きな進展があった。それは「情報熱力学」と呼ばれる新しい物理理論である。

情報熱力学では、情報理論の父と呼ばれるクロード・シャノンが考案した「シャノンエントロピー(平均情報量)」と、物質の世界の量である「熱力学的エントロピー」とが、ある種の同一視をされる。そのときに重要となる思考実験が「マクスウェルの悪魔」なのであるが…

…とやり始めるとあまりに長く・難しくなるので、情報熱力学の話はまた今度にしよう。重要なのは、情報と物質の関係は、我々がかつて思っていた以上に「本質的に近い」ということである。そしてこの「本質的な近さ」について敏感であることは、様々なモノ・コトに関わっていくときに重要なことなのだ。

ボーイスカウトもIT化の流れに積極的に乗っていくべきであることに、今更反対する人は少ないだろう。単にITを利用するのにとどまらず、ボーイスカウトとITの本質を見抜き、両者の美点を高め合わせること。ボーイスカウトとITのそのような「深い」融合を、世田谷第5団のIT担当として考えていきたいと思う。

ローバー隊 大浦晋