Rover Crew, 5th Setagaya

Rover Scout's Essays

Oct. 2018:8年越し

8年前、中学一年生の私は第15回日本ジャンボリー(15NJ)に参加した。それは、私のボーイスカウト活動における一大転機であった。

過酷な環境下での長期キャンプ。今までに見たことが無いほど大勢のスカウトが集まっていることに感動したこと。普段できない貴重な体験。新たな自分の特技の発見。様々な出来事があった。

そんな思い出深い15NJから8年、今度は引率のリーダーとしてジャンボリーに参加することになった。そこで、8年前のスカウトとしての参加経験と比較する中で、今回の参加スカウト達に対して感じた事がある。何人がこれを読むか分からないが、参加スカウト達に向けて、あるいは8年前の(そしてもしかしたら8年後の)自分に向けて、いくつか書こうと思う。

一、時間を意識するという事

「時は金なり」ということわざがあるように、時間の重要性に関しては議論の余地がない。そのことは、キャンプをはじめとしたボーイスカウト活動でも同じである。プログラムの時間が決まっているのだから、それに間に合うよう行動しなければならない。簡単なようだが、これが意外に難しい。特に年長者が時間の管理を怠るようだと、スケジュールを守る事は至難である。

8年前、時計もせずに出発した私は、時間を意識することなく、目の前の事をこなすのに必死だった。もちろん、スケジュールを守れなかったのは言うまでもない。

今回、初日に参加スカウト達を見渡して腕時計の着用率に軽く絶望しつつ、どこか共感を覚えた。彼らもこれから失敗するだろう。そう思うと、8年前に時計をせずにやってきた自分自身を見ているような気持ちになる。ジャンボリーが終わって次の活動に参加するときには、彼らも腕時計をするだろう。自らを振り返ってそんな予想をたてて、ムフフとするのだ。

ただし、腕時計をするだけで時間を十分に意識できるようにはならない。腕時計の着用に加えて、スカウトは何をすればいいのだろうか?

二、先を見据えるという事

予定を把握し、今後の状況を予想する。それが「先を見据える」ということである。ボーイスカウトでは、グリーンバーが主体となって今後のプログラムの内容を把握し、明日、明後日、さらにその先の行動予定を決めておくことが重要である。特に、予定を決める時に現場をどれだけ具体的に想像出来るかがポイントである。事前の想定がいかに具体的であるかが、本番での行動のクオリティを左右するのだ。

例えば日帰り登山の荷物を考えてみよう。雨が降る可能性があれば雨具が、靴擦れをする可能性があれば絆創膏が、いざと言う時のために非常食が、、、と様々なことが想定される。この準備に必要なのが、まさに先を見据える力である。

ボーイスカウトのモットーに「そなえよつねに」があるように、良い準備には想像力が欠かせない。ジャンボリー期間中、スカウト達は想像力の無さに苦しんでいた。持ち物が足りないのも、配給に遅れるのも、先を見据えてないからだ。登山やジャンボリーに限らず、日々の生活の中で「そなえよつねに」を意識し、先を見据える力を高めなければならない。

では、先を見据える力、つまり具体的に現場を想像する能力を訓練するにはどうすればいいのだろうか?

三、失敗を経験するという事

本気でやった場合に限るよ 本気の失敗には価値がある(小山宙哉『宇宙兄弟』第58話)

I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work(Thomas Edison)

私は失敗したことがない。ただ、1万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ(トーマス・エジソン)

失敗は成功の元(ことわざ)

などの言葉にあるように、失敗には非常に貴重な価値があり意味がある(エジソンの言葉は失敗を失敗と見なしていないが、意味内容としては同じである。ちなみに、混同されがちなことわざに「必要は発明の母(Necessity is the mother of invention)」がある)。特に理系の世界では、最初から実験が成功する事は非常に稀で、膨大な失敗の上に成功が訪れるのが当たり前。失敗は無駄にはならない、あるいは失敗を無駄にしないように行動すべし、ということが言える。

私の8年前の15NJに関しては、圧倒的につらい思い出の方が多かった。実は、日中のプログラムの具体的内容に関してはほとんど覚えていない。キャンプ生活の困難や失敗した記憶がほとんどである。しかし今振り返ってみると、そのジャンボリー期間中の失敗の経験が、今の自分のスカウト活動のみならず、普段の生活や生き方にまで影響していると感じる。そしてこれは私だけに当てはまる特殊なことではないと思う。

今回、17NSJにリーダーという立場で参加し、スカウト達の行動を観察して過去の自分と重ね合わせた。苦い経験をしたスカウトは多いだろう。しかし彼らは、価値のある失敗をしたのだ。ジャンボリーに参加し苦労した経験が、いつか彼らに良い影響をもたらす。失敗した経験がアドバンテージになる時が必ず来る。彼らの8年先を生きている私は、そう確信している。

* * *

兎にも角にも、ジャンボリーは素晴らしい経験である。まだ8年経っていない今回の参加者達には、それが分からないかもしれない。次は行きたくないと思っているスカウトもいるかもしれない。しかし、いつかまたジャンボリーに行きたいと思い、そして今回のジャンボリーを思い返し、そこで経験したことの意味を理解する日がきっと来る。

全てのスカウトが、そんな「8年越しのジャンボリー」を経験することを切に願っている。

ローバー隊 神田貴史