Rover Crew, 5th Setagaya

Rover Scout's Essays

Oct. 2018:ボランティア

8月3日から10日にかけて、石川県珠洲市鉢ヶ崎総合公園で行われた第17回日本スカウトジャンボリーに行ってきました。前回の第16回日本ジャンボリーと異なり、今回はリーダーとしての参加です。奉仕される側ではなく奉仕する側としての参加だったため、ボーイスカウトの「ボランティア団体」としての意味について考えるジャンボリーとなりました。

そもそもボランティアの定義とは何か?

ボランティアを特徴付けるのは、公共性・自発性・無償性・先駆性などですが、"volunteer"という英単語の原義は「志願した人」・「志願兵」です。つまりは「徴収兵」を意味する"draft"の対義語であり、そのことからわかるようにボランティアの最も重要な特徴は公共性や自発性にあります。

近頃東京オリンピックのボランティア募集要項における負担の重さが話題になっているため、「そもそもボランティアとは何か?」ということについて人々の関心が高まっていますが、ボランティアは本来的に「タダ働き」を意味するものではありません。無償性は結果としてボランティアと極めて相性が良いことは確かですが、本質ではない。そこを勘違いすると、いわゆる「やりがい搾取」を招くので注意が必要です。

今回のジャンボリーでリーダー達は、小学校6年生から中学生3年生までのスカウト達がキャンプサイトを設営・管理し、食事をしっかり採り、そして存分に活動出来るよう段取りしました。昼間の気温は39度を超えることもあるほど暑く、逆に夜間は冷えてテントが結露しました。そんな厳しい環境下で無償性も含めたボランティアが成立していることは、本当に素晴らしいことだと思います。

ジャンボリーでの私の仕事は健康管理。捻挫をしたベンチャースカウトに付き添って病院まで行ったり、帰りのバスで体調不良になったボーイスカウトの面倒を見たりしました。

つまり看護係だったわけですが、考えてみると看護という行為は前述のボランティアの定義と深く関係しています。完全にビジネスライクな態度だけでは、おそらく看護は成り立ちません(その点では、教育も似たようなものでしょう)。しかしかと言って、完全に無償の奉仕だけで看護システムを維持出来るかと言えば、それも難しいでしょう。

近代看護の祖であるフローレンス・ナイチンゲールに、次のような言葉があります。

I also depend on spirit of member’s service, but that’s also powerless without economic aid

構成員の奉仕の精神にも頼るが、経済的援助なしにはそれも無力である

この言葉は、ナイチンゲールが「タダ働き」、つまり「自己犠牲」に対して批判的であったことを示しています。その証拠に、ナイチンゲールは(意外なことに)赤十字の設立に反対の立場でした。その理由には彼女の看護に関する深い洞察が含まれています。そしてそれは真のボランティア・真の奉仕とは何かを考える上で大変参考になるので、調べてみると面白いでしょう。

以上のように書くと、もしかしたら「つまり、ボーイスカウトの奉仕活動に対して、給料を支払って欲しいと言っているんだな?」と思う人がいるかもしれません(そんな誤解は、まずしないと思いますが)。もちろんそうではない。そうではなく、ナイチンゲールの考えは、ボランティアとは何か、ボーイスカウトとは何かを考える上で非常に重要な視点を与えてくれる、ということです。

あるいはナイチンゲールの考えは、ボーイスカウトという奉仕運動が成立していることの素晴らしさを逆照射してくれる、ということも言えるでしょう。

ジャンボリーで看護のボランティアをすることを通して、このようなことについて考えをめぐらしたのでした。

* * *

4年前、山口県山口市きらら浜博記念公園で開催されたジャンボリーに参加した時も、終わった後はとても疲れていました。しかし、今回の疲労度は前回の比ではありません。

長期間スカウトの面倒を見ることによる精神的緊張や、行きと帰りでバスに13時間は乗っていたことによる肉体的負荷から、帰宅後は腹痛に襲われました。他にも、例えばテントを始めとした大きな荷物のコンテナへの積み込みをこなすため、最終日に午前4時に起床して作業したのは相当こたえました。

つくづく、ボーイスカウト運動の成立は不思議です。その不思議は、きっと(損得勘定を超えた行動が出来てしまう)人間の不思議さに由来するのでしょう。

ボーイスカウト運動は、究極的には社会を良くする運動です。ですからそれは、様々なことと関係しています。

私が大学で所属している建築学科での勉強も、建築の設計や管理という具体的な目的だけでなく、ボランティアとか奉仕とかいったものを経由して社会を良くするという目的に繋がっているのだということが、少し分かった気がします。

ボーイスカウトについても建築の勉強についても、ジャンボリーをきっかけにしてもっと考えてみようと思います。

ローバー隊 保科玄樹