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2018年12月23日(日)

多摩湖サイクリング感想

181223_自転車ハイク →この活動のアルバムへ移動

解散して思う。

「無事に帰って来られて良かった」

ボーイスカウトで企画を担当するようになってから、楽しい・つまらないという感想とは別に、「ほっとした」という感想が浮かぶことが多くなった。

今回の企画はボーイ隊の多摩湖サイクリング。感じたことや教訓を話そうと思う。

1. スカウトから気づかされた3つのこと
その1

スカウト達はこちらが想像した以上に体力がある。往復70kmもある道のりを、小学生もいる中ほぼ予定通りに走り切ったことに驚いた。おそらく,スカウトの体力に関するリーダー側の想定がかなり慎重だということだろう。スカウトは思った以上に強い。次のサイクリングではもっと攻めた想定でも良いのかもしれない。

ただし、スカウトの体力を慎重に見積もること自体はそれはそれで正しい。ここら辺は、チャレンジと慎重さの適切なバランスをとることが企画者に求められる。今回そのバランスを計画段階で練ることの難しさを知った。

その2

スカウト達は周りの景色をよく見ている。自分の普段の何気ないサイクリングとは随分違う。あるスカウトは「あんな所に変わった建物がある~!」と叫んだ。見てみるとずいぶん遠い。彼らは遠くの景色までよく観察しているのだ。

歳をとると、見える景色は想定内のものだらけになる。経験が増えるのだから必然だ。それに反比例して、ある種の観察力、つまり「あんなものがある!」という感動を伴った観察力は低下していく。代わりに「ああ、あれがあそこにあるな。病院はどこかな」のような確認作業としての観察力が増す。それはそれで大切なことだけれども、瑞々しい観察も出来るだけ続けたいと思った。そのためには大人なりのやり方、例えば視点の変更や高度な観賞が必要だろう。

その3

スカウト達はチェックポイントを小さなゴールに見立てる。自分はなにをする時も、最終目的やゴールだけを意識して動きがちだ。しかしスカウト達は、途中のチェックポイントに到着するたびに、いちいち達成感を感じて喜ぶのだ。こういう小さな達成感を一つ一つ感じることで、彼らはモチベーションを維持するのだろう。

いや、これは我々だって同じだ。大人になるとだいぶ先まで物事を見通せるようになるので、目先の事態にはついつい脱力して関わるようになる。局所的にではなく大域的に眺めることは、企画者としてたしかに必要なことだ。しかし「木を見て森を見ず」という態度も、忘れないでいたい。一つ一つのチェックポイントに一喜一憂する大人でありたい。

2. サイクリング中に感じたこと:安全第一

天気やペース配分、スカウトの体調など心配することは多くあった。そんな中、一番心配だったのは事故だ。

歩行者や車との接触・単独事故・自転車同士の接触など、事故には様々なケースがある。先頭を走りながら、常に後ろが気になって仕方なかった。しかも今回は地面が雨に濡れて滑りやい.普段より意識して走行したが、それでもリーダー含め転倒した回数は指では数えきれない。

しかし安全確保についても、スカウト達は良くやってくれた。曲がる時や左右に寄る時は常に合図の手信号を送っていたのだが、帰り道ともなると、手信号を見たスカウト達は「左寄って~!」などと後ろの仲間に声を出すようになった。だんだん(確認作業の意味で)周りが見えるようになっていったのに感心した。

* * *

そこでふと思う。ボーイスカウトに限らず、何かを企画して行動するときには「安全第一」だとよく言われる。しかしこの言葉、考えるとよく分からない。もし本当に,完全に安全第一で、100%の安全が確保されなければ企画を実行してはならないとしよう。すると、100%の安全確保など不可能である以上、自転車ハイクは中止して家で大人しくするのが一番である。

そしてこれは、自転車ハイクをはじめとするボーイスカウト活動だけに限らない。全てのことに言える。

仕事でもスポーツでも、あるいはもっと極端に言えば外を歩くことだって、安全第一を徹底するならやめた方が良い。事故を、その発生確率と発生した時の深刻さの掛け算、すなわち「リスク=発生確率×深刻さ」で評価しよう。すると、現実的にはリスクは0に出来ないので、リスクが最も低いであろう「家の中でずっと引きこもる」のような選択が、安全第一のスローガンの元では常に選ばれることになる。

* * *

これはおかしい。実際には、楽しさや自己成長などのポジティブな価値とリスクとのバランスを我々はとっている。「安全第一」はこのバランスを、リスク側に寄せることを言っているに過ぎない。あるいは、この言葉は安全・リスクを人の心に意識させるためのまさに「スローガン」なのだから、そんな論理的・数値的に考えること自体が不適切とも言える。

そんなことは、「安全第一」を唱える人は十分に分かっているのだろう。つまり「安全第一」は、「これは安全だろうか」という視点や確認作業的観察力を我々にもたらす「機能」が大事なのであって、その文字通りの「意味」はさほど重要ではない、というわけだ。

この言葉は100年ほど前のアメリカで生まれた。製鉄会社USスチールの社長で熱心なクリスチャンでもあったエルバート・ヘンリー・ゲーリーが、「生産第一、品質第二、安全第三」であった経営方針を「安全第一、品質第二、生産第三(Safety First, Quality Second, Production Third)」に変えたことから来ている。そして実際に、USスチールの労働災害は劇的に減ったのである。

* * *

しかしそれでもなお、「安全第一」の文字通りの意味が気になってしまう。また同時に、上で述べたことは「安全第一」の解釈を脇においたとしてもそれ自体として問題である。だから、ここで終わってはいけない。「安全第一」が確かに有効なスローガンである以上、それに疑いを持っただけのこの段階では話を終えられない。

ちなみに、“Safety First”なのだから、「第一」は計画時に考えるべき順番が最初であることを意味している。つまり安全を完全に確保するまで次に進むべからずと言っているわけではない、と解釈したところで、ここで問題にしていることは解決しない。

3. なぜ人に相談することが大事なのか

我々は、完全に安全第一の人生を善いものとは思っていない。何かしらのリスクをとってでも、危険なチャレンジをして善き人生を送りたいと思っている。自転車ハイクの企画で言えば、最終目的は「リスクを0にする」ではなく「自転車ハイクを楽しむ」であるはずだ。

問題は、ではどの程度しっかり安全管理をして、どの程度までリスクを減らせば良いのかである。

「出来る限りリスクを減らすべし」では、スローガンとしては良くても、論理的な解答にはならない。「自転車ハイクを中止して家に引きこもる」ことになってしまうからだ。「自転車ハイクの目的を設定し、それを達成する範囲で出来る限りリスクを減らすべし」ではどうか? これも実はダメである。「出来る限り」を文字通り受け取る限り、ちょっと考えれば分かるようにいくらでも金と時間と人をかけてリスクを減らすことが出来てしまうからだ。

* * *

どれくらいが良い塩梅なのか?

* * *

バランスや塩梅などと言っているが、難しいのは「事故のリスク」と「自転車ハイクの楽しみ」とを数値比較できないことだ。いやいや、市場原理的に全てをお金に換算することは可能だ、という意見もあるかもしれない。それは確かにお金の魔術的機能ではある(本来記号化できないはずのものを記号化してしまう、という魔術)。しかし、普通に考えてやはり「リスク」と「楽しみ」とは数値比較不能だ(本来記号化不可能なものを、資本主義はお金という形で強引に記号化している。その歪みが様々な社会問題を生んでいる、というのはよくある説だ)。

もしかしたら、「計画者が安全について(事故発生後の対応の想定も含めて)自信を持っていれば良い」という意見もあるかもしれない。しかしこれも考えると危うい。計画者の性格等に安全性が大きく左右されるからだ(計画者が楽観的過ぎると、安全確保が明らかに不十分なのにも関わらず自信を持ってしまうかもしれない)。

だから、良いバランス・良い塩梅を決めるためには、周りの人に意見を求めることが必要である。周囲の反応を伺うことで、安全管理についての落とし所を決める。つまり安全管理について色々な人に相談することの目的は、一つは様々なリスクを大きさ順に把握することであるが、もう一つは把握したリスクに対してどこまで安全施策を実施するのが妥当であるかの認識を共有することなのだ。

スローガンやモットー、そして「ちかい」や「おきて」は、その文字を眺めるだけではいけない。その中身について考え、独りよがりを排し、周囲と相談して良い塩梅に落とし込んでいくこと。ボーイスカウトのスローガンとモットーはそれぞれ「日々の善行」と「そなえよつねに」だが、その意味について説明し、さらに「ちかい」と「おきて」について隊長と話し合うことが進級課目として設定されていることは重要である。

* * *

今回の多摩湖サイクリング企画は、私にとって学びの多い経験だった。

もちろんその最終目的は、私自信の学びでも安全第一でもなく、スカウトの皆が楽しむことである。

スカウトの皆が、自転車の爽快感や仲間と一緒に走る楽しさを感じ、またサイクリングに行きたいと思ってくれたら嬉しい。

* * *

次は、目指せ100km超え!(もちろん「安全第一」で)

RS隊スカウト 山根

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