• B-Pって何?

左:Baden Powell(父)と右:Robert Baden-Powell(息子)

「B-P」は,ボーイスカウト運動の創始者であるロバート・ベーデン-パウエル(Robert Baden-Powell,1857-1941)の姓です。「ベーデン」が名で「パウエル」が姓なわけではありません。「ベーデン-パウエル」のひとまとまりで姓なのです。

この変わった名前は,1860年に数学者かつ神学者であったB-Pの父「ベーデン・パウエル」が亡くなった際,偉大な父を称えて家族が姓を「ベーデン-パウエル」に改めたことで生まれました。父ベーデン・パウエルは,オックスフォード大学のサヴィル幾何学講座教授職(Savilian Professor of Geometry)を務めるほどの高名な数学者でした。

というわけで,「B-P」は姓名のイニシャルではありません。したがって「B. P.」などと書くのは誤りです。

ボーイスカウトでは,この創始者のことを敬愛の念を込めて「B-P」と呼びます。例えば彼の誕生日(2/22)を祝う行事は「B-P祭」と呼ばれます。

ところで,この呼び方にはもう1つ意義があります。ボーイスカウト運動の有名なモットーである「そなえよつねに」が英語で"Be Prepared"なのです。

  • 肉声

この運動を成功させる鍵は,個人のふれ合いによるリーダーシップの育成である。

すべてのものの愉快な面を見る習慣を持った人は,困難や危険に出会っても明るい心で乗り越えられる。そればかりでなく,周りの人に希望と信頼を与える。

私たちはみんな壁を作っているレンガのようなものだ。私たち一人一人には決められた場所があり,1つが腐ったり,1つが外れたりすると,他のレンガに過重な重みが掛かり,ヒビが入り,壁はぐらぐらになってしまう。

もっと広く見なさい。もっと高く見なさい。もっと先を見なさい。

嫌々ながら行われたつとめの価値は半減する。喜んでなされたつとめの価値は2倍となる。

今後,何か腹が立つことがあったら,無理にでも口の端を上に曲げて,スマイルしよう。

幸福になる本当の道は,他人を幸福にすることにある。この世を,あなたが見出した時よりも少しでもより良いものとするように努力しなさい。

  • メッセージ

Last Message/最後のメッセージ

Dear Scouts

If you have ever seen the play Peter Pan, you will remember how the pirate chief was always making his dying speech because he was afraid that possibly when the time came for him to die he might not have time to get it off his chest.

It is much the same with me, and so, although I am not at this moment dying, I shall be doing so one of these days and I want to send you a parting word of good-bye.

Remember, it is the last you will ever hear from me, so think it over. I have had a most happy life and I want each one of you to have as happy a life too. I believe that God put us in this jolly world to be happy and enjoy life.

Happiness doesn't come from being rich, nor merely from being successful in your career, nor by self-indulgence.

One step towards happiness is to make yourself healthy and strong while you are a boy, so that you can be useful and so can enjoy life when you are a man. Nature study will show you how full of beautiful and wonderful things God has made the world for you to enjoy.

Be contented with what you have got and make the best of it. Look on the bright side of things instead of the gloomy one. But the real way to get happiness is by giving out happiness to other people. Try and leave this world a little better than you found it and when your turn comes to die, you can die happy in feeling that at any rate you have not wasted your time but have done your best.

"Be Prepared" in this way, to live happy and to die happy, stick to your Scout promise always even after you have ceased to be a boy and God help you to do it.

Your Friend

Baden-Powell of Gilwell

スカウトのみなさん

もしあなたたちがピーターパンのお芝居を見たのであれば,海賊の首領が,自分が死ぬときに胸から遺言状を取りだす時間がないかもしれないことを心配して,いつも遺言を口にしていたことを覚えているでしょう。

それは私にとってもまったく同じで,私は今すぐあの世に行くわけではありませんが,その日も近いと思うので,みなさんにさようならの言葉を送っておきたいと思います。

これが私からの最後の言葉になりますので,覚えて,そしてよく考えてください。私は最高に幸せな人生を送りました。ですから,あなたたちも私と同じように幸せな人生を送ってもらいたいと思います。神さまは,私たちが幸せで楽しい人生を送るよう,この素敵な世界にお送りくださったのだと,私は信じています。

幸せというものは,お金持ちになることでも,仕事で成功することでも,また自分の思い通りにすることでもなれるものではありません。

幸せになるための第一歩は,少年であるうちに健康で強い身体を作っておくことです。そうすれば,世の中の役に立つことができ,おとなになったときに人生を楽しむことができるようになります。自然について深く学ぶと,私たちが楽しめるように,神さまがいかに美しく素晴らしいもので満ちた世界をお作りになったかがわかるでしょう。

あなたが得たものに誇りを持ち,それを最大限に活用してください。物事の暗い面を見るのではなく,明るい面を見るようにしてください。しかし,幸せになる本当の道は,他の人たちを幸せにすることです。この世界をあなたが生まれてきたときよりもほんの少しでも良いものにして残すように努めてください。そうすれば,死ぬときがきても,ともかく自分は無駄にすごすことなく,最善を尽くしたと感じながら,幸せにこの世を去ることができるでしょう。

幸せに生き,幸せにこの世を去るために,常に備えてください。おとなになってもちかいを守ってください。それをするあなたを神さまはきっと助けてくださることでしょう。

あなたたちの友

ベーデン-パウエル

THE ONLY TRUE SUCCESS IS HAPPINESS/たった一つの真の成功とは幸福になることです

What is success?

Top of the tree? Riches? Position? Power?

Not a bit of it!

These and many other ideas will naturally occur to your mind. They are what are generally preached as success, and also they generally mean overreaching some other fellows and showing that you are better than they are in one line or another. In other words, gaining something at another's expense.

That is not my idea of success.

My belief is that we were put into this world of wonders and beauty with a special ability to appreciate them, in some cases to have the fun of taking a hand in developing them, and also in being able to help other people instead of overreaching them and, through it all, to enjoy life ― that is, TO BE HAPPY.

That is what I count as success, to be happy. But Happiness is not merely passive; that is, you don't get it by sitting down to receive it; that would be a smaller thing ― pleasure.

But we are given arms and legs and brains and ambitions with which to be active; and it is the active that counts more than the passive in gaining true Happiness.

成功とは何か?

組織のトップに立つことですか? 金持ちになることですか? 地位を得ることですか? 権力を持つことですか?

否,まったく違います!

これらのものを含め,様々な考えが君たちの頭に自然と浮かぶことでしょう。一般に,これらのことこそが成功であると刷り込まれています。あるいはそれは,他の人々を出し抜くということでもあり,また,仲間であるかどうかに関わらず,他の人々よりも君たちの方が優れていることを見せつけるということでもあります。言い換えれば,他の人々を犠牲にして手に入れるものです。

そのようなものが成功とは,私は考えません。

私の信じるところでは,我々は,この驚異と美に満ちた世界に,それらを正しく認識することのできる特別な能力を持って生まれてきたのです。それは例えば,世界の驚異と美の解明と発展に関われることを喜びに感じる能力であり,また,他の人々を出し抜くのではなく助けることができる能力でもあります。そしてそれらを通して人生を楽しむことができる。― これこそが「幸福になる」ということなのです。

以上が,幸福になることこそ成功であると私が考える根拠です。しかし,幸福は単に受動的なものではありません。つまり,座ってただ待っていても手に入れることは出来ないのです。座ってるだけで手に入れられるのはもっとつまらないもの,― 快楽にすぎません。

しかしながら,私たちには能動的に行動するための腕,脚,頭脳,そして志が備わっています。したがって,受動的であることよりも能動的であることが真の幸福に通じているのです。

  • ボーイスカウト運動

1907年8月:ブラウンシー島実験キャンプ

それは,小さなキャンプから始まった

1907年8月1日から8日までの8日間,B-Pは様々な地域や階層出身の20名の少年と共に,イギリスのブラウンシー島で実験キャンプを行いました。このキャンプは「スカウト最初のキャンプ(The first Scout camp)」と呼ばれています。

ブラウンシー島実験キャンプに手ごたえを得たB-Pは,翌年の1908年に『スカウティング・フォア・ボーイズ(Scouting for Boys)』という本を著しました。その内容の一部は1906年6月から雑誌上で発表されていたもので,既に少年達の間で大好評となっていました。

この1906年から1908年にかけてのB-Pの活動が,ボーイスカウト運動の始まりです。

運動の目的

ボーイスカウト運動は,野外活動を中心とするプログラムの実践を通して,青少年の人格・市民性・肉体を教育することを目的としています。具体的な内容については,日本連盟のページや,「5団紹介」の中の動画写真,あるいはブラウンシー島(実験キャンプ)プログラムのヒントをご覧ください。

理論

*この「理論」で述べるのは,ボーイスカウト運動の一般的な見解では無いので,ご注意ください。

ボーイスカウト運動は「実践」を重んじる。B-Pは「実践」の人だった。だから文章であれこれ理屈を説明するのではなく,実際に活動を経験することがボーイスカウト運動を理解する上で大切である。座学が中心の学校の勉強とはこの点で大きく異なる。…これが,ボーイスカウト運動の一般的イメージです。そして実際,これが正しい理解でしょう。

しかしここでは,このような一般的イメージとは異なる見方をボーイスカウト運動に付け加えます。そのモチベーションは,ブラウンシー島でのキャンプから100年以上が経ち,コンピューターやGPSやスマートフォンが周りにあふれ,B-Pが生きた20世紀初頭とはだいぶ状況が異なる現代において,なおボーイスカウト運動を続けることの意義を再設定することにあります。そのためには,B-Pの残した言葉や文字を生産的に読み替えることで,ボーイスカウトの理念や活動の狙いを抽象化・普遍化し,我々現代人の生活に接続する必要があります。

異なる見方を付け加えるための具体的試みについては,世田谷第5団ローバー隊のHPの中の「Rover Advisor's Essays(ローバー隊長のエッセイ)」にある以下の記事をご覧ください。

あるいは,もう少し読みやすい記事として,世田谷第5団ボーイ隊のHPの中の「レポート」にある以下の記事をご覧ください。

さらに読みやすい記事として,18歳から25歳までのローバースカウト達が,具体的な活動を通じてボーイスカウト運動の意義について考えた文章が,世田谷第5団ローバー隊のHPの中の「Rover Scout's Essays(ローバースカウトのエッセイ)」にあります。

最初に述べた通り,ここでの「理論」で紹介した内容はボーイスカウトの一般的な説明ではありません。しかし根拠(正統性)が無いわけでもありません。B-Pは確かに「実践の人」でしたが,それと同時に「理論の人」でもありました。なぜなら,ボーイスカウト運動の起源が「ブラウンシー島での実験キャンプ」であったのと同等かそれ以上に,『スカウティング・フォア・ボーイズ(Scouting for Boys)』の出版がすべての始まりだったからです。B-Pは名文家でした。その筆力(と挿絵の魅力)によってこの本がベストセラーになったこと,それが決定的に重要だったのです。

B-Pは「言葉を話し・聞く人」であるのと同時に,「文字を書き・読む人」でもありました(これは,「クリミアの天使」という名を伴って,実践的な看護婦・看護師としてイメージされがちなフローレンス・ナイチンゲールが,実は応用数学者・統計学者であり,統計を駆使して大量の文章を読み書きしたインテリであったことと似ています)。そしてまた,「B-P」という姓の由来となったB-Pの父B. P.は,ボーイスカウトとは一見縁遠そうな数学の教授でした。B-Pを考える上で見過ごされがちなこれらの事実は,現代のボーイスカウト運動の意義を考える上で注目に値します。

  • 各隊の宣誓

ここでは,ボーイスカウト各隊に定められている「宣誓」を紹介します。それは「やくそく」・「きまり」・「さだめ」・「誓い」・「おきて」・「モットー」・「スローガン」などと呼ばれており,その言葉を暗記することが各隊毎にスカウトに求められます。

しかしもちろん,単に言葉を暗記するだけではいけません。暗記したうえでそれを自分の言葉で再解釈し,日々の生活や具体的な行動に納得と実感を伴って結び付けなければなりません。ですから,ボーイスカウトの進級過程の中には,宣誓の「暗記」と共にそれらを「実践」することが,しつこいくらいに盛り込まれています。例えばボーイ隊の進級過程は「初級スカウト」・「2級スカウト」・「1級スカウト」・「菊スカウト」と段階的に進んでいきますが,それぞれの進級科目の一番最初に書いてある項目は次のようなものです。

  • 初級スカウト:「ちかい」と「おきて」が言える。そのうえで、隊長と話し合う。
  • 2級スカウト:「ちかい」と「おきて」について意味を説明でき、その実践に努力していることを隊長に認めてもらう。
  • 1級スカウト:「ちかい」と「おきて」の実践に努力していることを日常の生活で示す。
  • 菊スカウト:「ちかい」と「おきて」の実践に努力して、他のスカウトの模範となる。

これら最初の項目は進級過程の中で最も抽象的で,なんとなく流してしまうスカウトも多いと思います。しかしここを真剣に考えられるかどうかが,以下の「宣誓」がただの「お題目」になってしまうかどうかを決めます(そして私見ですが,上の「理論」で書いた通り,B-Pが「理論と実践」あるいは「文字と言葉」の人であったことの重要性が,この項目に現れています)。

このように考えて,以下の宣誓を積極的に「味わって」みてください。

  • ビーバー隊

対象学年

小学1年生4月-小学2年生3月(6歳-8歳)

ビーバースカウトのやくそく

  • ぼくはみんなとなかよくします。
  • ビーバー隊のきまりをまもります。

ビーバー隊のきまり

  • ビーバースカウトは げんきにあそびます
  • ビーバースカウトは ものをたいせつにします
  • ビーバースカウトは よいことをします

ビーバースカウトのモットー

  • なかよし

  • カブ隊

対象学年

小学3年生4月-小学5年生3月(8歳-11歳)

カブスカウトのやくそく

  • ぼくは,まじめにしっかりやります。
  • カブ隊のさだめを守ります。

カブ隊のさだめ

  • カブスカウトは すなおであります
  • カブスカウトは 自分のことを自分でします
  • カブスカウトは たがいに助けあいます
  • カブスカウトは おさないものをいたわります
  • カブスカウトは すすんでよいことをします

カブスカウトのモットー

  • いつも元気

  • ボーイ隊

対象学年

小学6年生4月-中学3年生3月(11歳-15歳)

  • ベンチャー隊

対象学年

高校1年生4月-高校3年生3月(15歳-18歳)

  • ローバー隊

対象学年

大学1年生4月(含,浪人等)-(18歳-25歳)

*ボーイ隊以上のスカウトは,大人のリーダー含めて皆共通の「誓い」・「おきて」・「モットー」・「スローガン」を持ちます。

スカウトの誓い(ボーイ隊以上のスカウト・リーダー共通)

  • 一つ,神(仏)と国とに誠を尽くしおきてを守ります。
  • 一つ,いつも,他の人々をたすけます。
  • 一つ,からだを強くし,心をすこやかに,徳を養います。

スカウトのおきて(ボーイ隊以上のスカウト・リーダー共通)

  • スカウトは誠実である
  • スカウトは友情にあつい
  • スカウトは礼儀正しい
  • スカウトは親切である
  • スカウトは快活である
  • スカウトは質素である
  • スカウトは勇敢である
  • スカウトは感謝の心を持つ

スカウトのモットー(ボーイ隊以上のスカウト・リーダー共通)

  • そなえよつねに(Be Prepared)
  • スカウトのスローガン(ボーイ隊以上のスカウト・リーダー共通)

    • 日日の善行